俺は手に持った割り箸の血を
イエスから頂いた物だと信じ
無我夢中でねぶった
のたうち回るサンバ隊
テレビの中へ逃げようとする前田
そんなことはお構いなしに俺は
ひたすらに砂漠に突如現れた湧き水のごとく
血をねぶった
俺の家のテレビは小さい
14インチのブラウン管テレビに挟まった
前田が画面を突き破り
首周りにガラス片をネックレス代わりに血を流しながら
俺の方へ振り返った
前田が言った
「俺は前田ではない」
ねぶっていた箸をテーブルに叩きつけ
俺はゆった
「俺が信じてもイエスはお前を信じない」
サンバ隊の血を啜った俺は
イエスの血が流れている
あれから二年
俺はずっと十字架にくくりつけられたまま
ブラウンに映る前田を遠くから観賞していた。