再開は突然に
願えば叶う
あの味あの街あの。。。
通話を終えた私は、12月寒さを思い出し
手を擦り合わせ暖をとっていた。
「久しぶりやのぉずっとお前を待ってたんだ」
と店の前で佇む私の背後から
懐かしのあの声が
私は先ほどの寒さなんて吹っ飛ぶぐらいに
「しししぃししょおぉぉぉー!!」
と光永の方へ振り向いた。
が。。。
あの当時から数十年経っても
光永の顔や体型何一つ変わってない
姿の師匠が
そこには居た。
当時でも60代 今なら70代いや、
もうあれから何年経ってるんだろう
老いを感じさせない光永であった。
私の驚きを察したのか
「結論から言う お前は、過去にタイムスリップしたんだ」
結論すぎて
次の言葉までも恐怖に感じる
が続けて光永は言う。
「あの味を思い出したんだ仕方ない過去に戻るはずさ」
到底理解出来ない。
すると本当に過去に戻ったかのように
今まで灯りもついてなかった割烹キッコロの店内の照明が窓越しに伝う
そして何より当時、女として真っ当していた
女の姿に私も戻っていた。
「さぁこんな寒いところやなしに中に入れ」
と。
私は、師匠の言う通りに店内に入った。
またも驚くべきかな
店内のカウンターには、幽体離脱でもしているのか私は!
と言わんばかりに
当時の私と親父と料理場で鍋をぐつらせている
光永が目の前に居た。
「白髪はまだきてねぇみたいだな」
と。
そう、思い返すと私は親父に連れられ初めて肉吸いを口にしていた
まだ白髪が来店していない場面であった。
過去通りなら白髪は、肉吸い寸胴にぶち込む珍事が起こるはず
そんな事を考えている私に師匠は
「ほれ!はやく席につけ」と
急かすようにカウンターに座る
過去の私を指差ししながら未来から来た私に言っていた。
兎にも角にも私は過去の私に飛び込むように触れた
親父「肉吸いっちゅーもんわなぁ」
おおおやじぃいいい
過去の会話が繰り広げられていた。
本当にタイムスリップしたんだな。
私はもう二度と味わうこともないだろうと思っていた肉吸いをこんな形で
口にするとは
料理場の師匠も未来から過去へ移り変わったのか
私に「さぁ早く白髪がくる前に肉吸いを食っちまいな」と。
もちろん親父だけは過去のまま
永遠と「肉吸いちゅーもんわな」と過去をループしている。
私は、何が何だか分からないまま味わっていたい程魅力された肉吸いを箸も使わずに手で口の中に入れ込んで食べ干した。
「ねぇーちゃんそれが肉吸いっちゅーもんや!」
と、またも私は必死に肉吸いを口に入れることだけに集中していた為か
カウンターに白髪男が座り
声を掛けてきた時に気付いた。
ちょっとまって
過去と未来が変わっている。
「ねぇーちゃんおそいねん」だったはず
その一言で白髪の未来は師匠と私によって消された過去であったはず。
そうか、師匠はこの為に私を未来から過去へタイムスリップさせたのか
白髪に師匠は、「あんたも肉吸いどーぞ」
と過去の過ちが無かったことのように優しく肉吸いを差し出していた。
親父「肉吸いちゅーもんわな」。。。
と、未だにループしている。
おわぴ